ピッキング防止法 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律とは
ピッキング防止法
概要
2003年6月4日に成立し、2003年9月1日から施工されたピッキングツールの所持の禁止および鍵・錠の防犯性能の維持・表示等を義務付けた法律のことです。
この法律は、正式には「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」と呼ばれ五章と附則から構成されています。
第二章
第二章では「特殊開錠用具の所持等の禁止」として「特殊開錠用具」(ピッキングなど鍵開け専門のツール)所持の禁止、「指定侵入工具の携帯の禁止」として「指定侵入工具」(ドライバーやバールなど不正な鍵開けに使用する可能性のあるツール)を持ち歩くことを禁止しています。
第三章
第三章 第七条では、建物における鍵・錠の性能の向上の義務と、性能表示を定めています。
この法律により制定された政令(特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律施行令)の、第三条により性能表示を必要とする建物錠(指定建物錠)が定められています。
指定建物錠には、
- シリンダー錠
- シリンダー
- サムターン
の3種類があり、それぞれの項目に下記の表示内容が定められています。
【シリンダー錠】
耐ピッキング性能(時間表示)、耐鍵穴壊し性能(時間表示)、耐サムターン回し性能(有無)、耐カム送り開錠性能(有無)、耐こじ破り性能(有無)、子鍵の本数
【シリンダー】
耐ピッキング性能(時間表示)、耐鍵穴壊し性能(時間表示)、子鍵の本数
【サムターン】
耐サムターン回し性能(有無)
罰則
罰則は第五章において定められており、 第二章(所持、携行)に違反した場合は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に、また、特殊開錠用具の販売、授与は、二年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金が定められています。
第三章(防犯性能の向上等)の命令違反、虚偽の申告が有った場合も百万円もしくは三十万円以下の罰金が規定されています。
ピッキング防止法の実際
ピッキング防止法では、ドライバー、バールも建物への侵入の用に供されるおそれが大きいものとされ業務以外での所持が禁止されています。
これは、警察の裁量で一般人でもドライバー、バールを所持し不正侵入を行う疑いがあるとされると逮捕される場合があり得ることを意味します。
実際にピッキング防止法が施行された事例もかなりあります。
- 通報のあった不法駐車の車内にバールを確認したとのことで正当な理由のない所持として逮捕
- 路上でマイナスドライバーを持つ挙動不審な人物を正当な理由がない所持として逮捕
- 深夜に少年がマイナスドライバーを所持し学校周辺を歩いているところをピッキング防止法違反で逮捕。
- 窃盗事件の多発する地域でマイナスドライバーとバールを正当な理由なく所持していた男性二人をピッキング防止法違反で逮捕
いずれも警察の発表では犯罪の未然防止となっています。
2017年には、青森県警が乗用車内でマイナスドライバー2本を正当な理由なく所持していたとして、ピッキング防止法違反の疑いで陸上自衛隊八戸駐屯地の3等陸曹の男性を逮捕したことが話題となりました。
一般人でもピッキング防止法で指定侵入工具に該当するマイナスドライバー【*1】を所持しているだけでピッキング防止法違反となる可能性もありますので、不要な工具類は所持しない方が安全です。
【*1】特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律施行令(平成十五年政令第三百五十五号)
第二条 法第二条第三号の政令で定める工具は、次に掲げるものとする。
一 次のいずれにも該当するドライバー
イ 先端部が平らで、その幅が〇・五センチメートル以上であること。
ロ 長さ(専用の柄を取り付けることができるものにあっては、柄を取り付けたときの長さ)が十五センチメートル以上であること。
二 次のいずれにも該当するバール
イ 作用する部分のいずれかの幅が二センチメートル以上であること。
ロ 長さが二十四センチメートル以上であること。
三 ドリル(直径一センチメートル以上の刃が附属するものに限る。)
出典 電子政府の窓口 (http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=415CO0000000355#8)
上記の法律施行令により、所持が禁止されている対象のマイナスドライバーは、長さ15センチメートル以上で先端の幅が0.5センチメートル以上のもの特定されます。